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ほとばしった

二週連続配信のスザユフィに迸ったので某所に初稿をのせたりこちらにうpったりです。しかし書いてる暇はないので藏の発掘です。今回はスザクがフレイアをうったときに偉いうつやんなあ…とがくぶるし、拍手をスザク拍手に改造して、スザクへみんなで大きな拍手を送ろうと画策したときに書いた小話です。二日で四桁、皆さんのパッションが素晴らしかったです。しめに自分でもパソコンの前で柏手叩いて(講義の関係ででホテル宿泊時、隣の友人に怒られる)じぶんでもばっちこーんと叩き込んでの終了になりました。
前置きが長くなりましたがスザユフィです、誤字脱字については察して下さい、当時サブノートで書いてたんです、くるるぎきょうほんとごめんなさい。orz(くるるぎに踏まれるような土下座)
いつかきちんと直してしっかり小説ページに入れないと…でもスザユフィフォルダパッションのまま書き綴ったものでドウシテコウナッターがたくさんあって物量的にも精神的にも辛いです。
足下に転がるいくつかの人影を侮蔑しきった翠の瞳が見下ろしていた。散乱しているへし折られたサーベルは、刃こそつぶされているものの他は真剣と全く際のない作りで十分な強度を誇る。大の大人に殴りつけられれば軽く骨くらい砕けるだろう。そのサーベルをスザクは素手で砕いた。




Elysion.



 勝負は一瞬だった。スザクは抜き身の刃を前に、自信の獲物を抜きもせずはじめの合図と同時に相手の懐に飛び込んで鳩尾に正拳。仰け反ったところを容赦なく踵を叩き下ろした。
 その横から、もう一人に振り抜かれた刃を肘と膝で止めて、相手の手首ごと間接をとりあり得ない方向に、無造作と言っていいほどに楽々と曲げる。
 ぼきんと鈍い音ともに砕ける骨と刃。うめき声を上げてうずくまる軍服を着た将校二人を、今、冷然とスザクは見下ろしている。
「先ほどの言葉、取り消していただく」
 かしゃん、とつばなりの音が響く。ここで否と言えば抜く。腰に履いたサーベルは、彼らと同じく刃をつぶした模擬試合用のものだ。しかしスザクが持てば十二分に凶器でしかなく、彼らは屈辱と激痛の泥濘の中に蹲ったままだ。
「……成り上がりのイレブンが!」
 砕かれた腕を引き寄せ、膝をつきながらうめく一人が今更ながらに口走った。
「貴様なぞ、あの、第三皇女の――!」
 しゃん!と冷徹なつばなりの音とともに切っ先がのど元に突き立てられる。
 しかしそれをさらなる銀光の一閃が遮った。はじかれた刃が、のど元ぎりぎりでとどまっている。
「そこまで。こたびの決闘このヴァインベルグが見届け、勝敗は決した。貴君らの言い分はこの敗北によって正当性を失い、神と我らが皇帝は、正義はこのくるるぎ卿にありと認められたのだ」
「……ジノ」
 止めるな、という言外の言葉に、明るい海色の瞳が陽気にスザクをにらんだ。
「卿もそれ以上敗者を貶めるというのなら、守られた姫君の名誉もまた地に落ちる。解っているのか?」
 ぎりぎりに均衡を保っていた刃からすっと殺気が溶けて消える。
 サーベルを引いたのはジノが先だった。横からはじいたスザクの刃に触れもせず、慣れた仕草で鞘に収める。厳しい視線でにらみつけていたスザクも、刃を静かに滑らせて鞘に戻した。
 そのまま、背を向けて、最後に翠の瞳が一片の情も見せずに彼らを射抜いた。
「次はこちらから手袋を投げることになります。その機会がないよう、願っています」
 後はもう、こつこつと堅い軍靴の音を響かせて去っていく厳しい背中を見送って、ジノは軽く首をすくめてゆっくりと追いかけた。
「最初からわかっていた事実だろう。たとえ非ブリタニアであろうと、ラウンズを拝命するジノ・ヴァインベルグと肩を並べて戦い比肩する男を相手どって勝てる道理があるはずもない」
 ちら、と地に伏したまま動けもしない軍人に最後に一言餞別を置いて。
 
 
 
「スザーーク、ちょーーっとっこっちこーい」
 すたすたと歩いていくスザクの首根っこを捕まえて、ジノはぐいと引っ張った。そのとたん、不機嫌そうにスザクの眉がよる。
「……ジノ、お前な。いくら有名貴族だからって決闘に割ってはいるなんてこと」
「貴賎なんぞ関係あるものか。俺はお前は頭に血が上るが早いことに原因があったようにしか思えないがな」
「勝敗が決した以上、敗者は勝者の自由だろう?」
「手袋を投げてまで仕掛けた決闘で、あそこまでぼろぼろにされてしかも二対一。いくら力こそすべて、卑怯上等のブリタニアの合理主義でもいいわけ聞かないくらいたたきのめせばもう十分だろう。あれ以上はお前がやばい」
 首根っこをつかんだまま、ジノはスザクにかまわずすたすたと歩き始める。いつの間にか慣れた宮殿内。見るものすべて、スザクにはもはや真新しくもない。――日本から、でることなんて無いと思っていたのに。
 扉の一つの前で、ごんごんと貴族にあるまじき乱暴なノックを響かせて、中の返事を確かめるまもなくドアを開く。
「アーニャ居る?」
 ラウンズに与えられる休憩用のスペースは個人の自宅の二件分に相当する。それが個々に与えられているのだから、スザクにとってはあきれる話だ。
 ふかふかのソファに猫みたいに転がって、携帯電話をいじっていたアーニャがふわふわの髪を揺らして起きあがった。
「ジノ?何?」
「ちょっと中入れて、で、あれ持ってきて」
 あれ、といって部屋の奥を指すと、ああと頷いてのそのそと起きあがったアーニャが、ソファの上から降りた。ふかふかのラグが敷き詰められて居るから小さな足がふっくらと沈んだ。
「で、お前は脱げ」
「は?」
 ぐいぐいと首根っこは捕まれたまま、ずかずか部屋の中に入って、アーニャの定位置のソファの、斜め横のカウチにスザクを無理矢理座らせる。騎士の正装の上着を引っぺがすと、思い切りスザクが眉をしかめた。淡々とアンダーも脱がせて、袖をまくる。青紫に腫れた患部を見たジノは、盛大にため息をついた。
「お前は、もうちょっと導火線を長くしろ」
「……別にいつものことだし」
「言い訳するな。それから素手でサーベル折るな。もうちょっと真人間に近づけ」
「……ジノだってやればできるだろう」
 スザクの斬撃に直前で割ってはいるなんて、常人にできることじゃあない。
「やればな。でも普通はこんな非効率的なことはしない。私なら剣で弾く。お前はアホか」
 だんだんと貴族にあるまじき言葉遣いになってくるのは少しだけジノが怒っている証拠だ。
 本気で怒ると冷然とした生まれながらの貴族の言葉になるからすぐに解る。
「……ま、手加減はしていたようだしな。許してやるよ」
 最初から、剣は寸止めだったし致命的な間接を砕くようなこともしていない。スザクが本気で戦えば素手で人が殺せる。
「君に許されるようなことは最初からしていない」
「……私が許しておくうちに、許されておく方がいいんじゃないかな、区縷々義侠?」
 その言葉の真意を正しく汲み取って、スザクは不機嫌な顔をさらに渋面にしかめた。
 とたとたと足音が近づいてきて、消える。ラグの上に来たアーニャが立ち止まってこちらを見ていた。半裸に脱がされたスザクとそれを無理矢理押さえつけているジノを見て、ちょっとだけ首をかしげる。
「写真、だめ?」
「だめ。先に手当」
「……氷の方がいい?」
 ことん、と小さな手が持ってきた救急箱をジノの横に置いて、スザクをのぞき込む。痛々しく腫れた患部が、スザクには珍しく乱暴な筋肉の使い方をしたのだと教えていた。
「よくあれで何を持ってくるか解るね……」
 軽くあきれた声を出されて、ジノとアーニャは肩をすくめた。つきあいが相当長いのだから仕方がない。それに。
「お前に言われたくない」
「は?」
 然り、と頷いたアーニャに不思議な顔をしたスザクが間抜けな声を出す。それにかまわず、痛々しく腫れた患部をのぞき込んだアーニャが怪我を見聞して感想を言いはなった。
「……不器用なことをしたのね」
「不器用?」
「私なら怪我なんてしないもの」
 小さな体と体重の軽さはどうしたってアーニャの枷だった。だがその俊敏さはスザクに勝るとも劣らない。その打撃の正確さは、モルドレッドの強力無比な攻撃力を御してあまりある精巧さを誇る。そうでなければ、あのような危険な兵器を与えられるはずがない。
「何をそんなに怒っていたのか知らないけれど、悲しむ人がいるんじゃないの?」
 ふんわりと揺れる髪が小さな顔を縁取って、少ない表情のままスザクの心をえぐった。固まった表情を一別して、アーニャは再び立ち上がる。
「氷、とってくる」
 まってて。と奥のキッチンに向かっててくてくと歩いていく小さな背中に、スザクはようやく声をかけた。
「アーニャ」
 なに、と言葉もなく振り向いて小さく首をかしげる、その仕草に思い出す人がいて、スザクがかすかに表情を緩めた。彼女の髪の色と、にている。
「ありがとう」
 ぱちっと瞬いたアーニャが、軽く首をすくめてどういたしまして、と小さくつぶやいて奥に向かう。その耳がちょっとだけ赤くなっていることに気がついたジノが、くつくつと笑った。
「何だ、こっちに礼はないのか?」
「……ちょっと心情的に無理」
 正直な言葉に爆笑しながらジノが湿布を貼って、ガーゼを当てた上から患部に起用にテーピングを施していく。びっと強く止められた二の腕が痛んだ。けれどこの上から氷で冷やせばだいぶましになる。
 職業柄互いに怪我には慣れっこだ。数日もかければ腫れも痛みも引くだろう。
「もうちょっとな、余裕もて。お前の姫様のために」
 ジノは、彼らの間に何があったか知らない。ただ、ふたりが主従であり、主と騎士であり、分かちがたい絆で結ばれていると言うことしか知らない。それは死ですらも超えるほどの。
 だから解ることもある。
「スザクが怪我したらお前のお姫様が悲しむんじゃないのか?」
 率直に放たれたまっすぐな言葉は簡単にスザクをえぐった。幾度も、自信を軽んじてくれるな、大切にしてくれ、そう言われ続けて、彼女はいつもスザクを思いやって。
 項垂れるスザクの視線の先に、青い徽章が転がっていた。皇族直属の選任騎士の証だ。ジノに捕まっている腕じゃないほうを伸ばして、ジャケットから転がり落ちたそれをつかんで眺める。
「……命より大事なものを貶められたらジノも同じことをするよ」
「命より大切なものなんぞ他にはないよ」
「嘘だ」
「本当だ。何をおいても生きていて欲しい人がいるなら、私は命こそすべてだろうと思ってる」
 静かな言葉は、雨のようにスザクの心に染みいった。なるほど、確かにその通りだ。――どんなことがあっても何が起こっても、生きていて欲しいと願うこと。それを痛いほどスザクは知っている。
 青い徽章をぎゅっと握りしめてうつむいた頭に、ひやっと氷が押し当てられた。
「つめたっ、ってアーニャ…!」
「ナイスタイミング、よしそれ寄こせ」
 小さな手から氷嚢を受け取って、問答無用でスザクの腕に押しつける。荒っぽい手当に離れているものの、ジノのそれは輪をかけて荒っぽい。アーニャにはもうちょっと丁寧にしていたのに何故だ。……性別の差だと解ってしまう自分が悔しい。確かに重傷でもない男に丁寧に優しく心を込めて手当をしてやる性癖は持っていない。
「スザク、これ」
 氷嚢を持って、冷たくなった小さな手がスザクの拳の上にそっと触れた。騎士の証には触れず、スザクの手の上から。……これはスザクだけが触れていいものだと彼女は諒解しているのだ。
「殿下の?」
「……ああ」
「そう」
 その後、何の興味もなさげにぽんぽんと携帯を操作し始める。始めに言ったとおりに写真に撮られるのだろうか。微妙な感情を噛みしめているスザクの前に、ぱっと小さな画面が曝された。
 携帯電話の明滅。画面の中、体いっぱいで笑っている三人の子供たちが写っていた。小さな草花の咲く野原で子猫みたいにじゃれ合って笑っている。目を見張って、言葉もないスザクの前で、アーニャの小さな指が器用に携帯電話を操作した。
 くるくる変わっていく表情。幼なじみの困り切った顔。亜麻色の髪の少女の、好奇心いっぱいに開かれた、初めて見た美しい紫の瞳。兄譲りだと言っていた鮮やかな紫の。でも、スザクには義姉にも似ていると思えた。あせない過去の記録。小さな妹に花冠をかぶせて頬に口づけている子猫みたいな少女たち。それを見守る黒髪の少年。
 そこにあるのは、黒髪と亜麻色の髪と、春の色の、同じ紫の瞳を持った。
 呼吸を止めたスザクの背中を少々乱暴にジノがたたいた。ぐしゃっと頭を撫でられる。
「……姫の名誉をお守りしたのね?」
「……うん」
「じゃあ、ご褒美」
 ぽん、と携帯電話をスザクの手の中に預けてアーニャが幼い仕草でちょこんとスザクの足下のラグに座り込んだ。
 スザクは黙って、小さな画面を見つめている。こんなところに、知らない君が居た。そう思うと泣きたいような、笑いたいような、そんな気分になる。
「じゃ、俺からは罰。ユーフェミア様にシュナイゼル殿下の推薦蹴ってラウンズ辞退したって伝えておいたから」
 ぶはっと吹き出したスザクが、ばっとジノを見上げた。翠の瞳いっぱいに動揺が広がっている。これが戦場で無類の戦果を誇る誉れ高き白き騎士だなんて誰が信じるものかと、からりとジノは笑った。
「ちょ、それは内々にってはなしだったしもともと僕はユフィの騎士なんだから受けるもうけないもない……!」
「せっかく背中を預けられる男が同僚になると思ったら辞退だぜ、あっさり。帝国一の栄誉を。しかもシュナイゼル殿下の推薦を。アーニャ、どうだろうこれは」
「……姫様を愛しているんじゃあ仕方がないんじゃあない?」
「そうか、愛は偉大だな。もうユフィとか読んじゃってるしな」
 敬称だろう、普通。まっとうな突っ込みも動揺しきりのスザクには通用なんてするわけがない。
「ちょ、待った二人とも……!」
 口走った愛称も気がつかないほど動揺して居るスザクにはかまわず、二人は深々とわざとらしくため息をついた。
「せっかく仕事が楽になると思ったのに」
「給料分は働くこと。まあ使える人材が人事権拒否しちゃ仕方ないし」
「栄転なのに」
「愛に理由は要らないのさ」
「ちょっと黙れ二人とも……!!」
 ぎりぎりとにらみつけてくるスザクを軽くいなして、にっと笑ったジノが最後通牒を突きつけた。
「どうして相談してくれなかったとそれはそれは悲しんで折られた。せっかくあなたが認められる機会を私に黙ってと」
「だってそれは!」
「明日本国に帰ってくるって」
「ちょ、特区放ってくるつもりなのか……!?」
「ルルーシュ皇子の地位の返還手続きが間に合ったから全部押しつけてくるとか」
「二年か、良く陛下が許されたよ」
「EU陥落の戦勝記念には恩赦でちょうどいいと思うけれど」
「それでユーフェミア殿下も皇籍変換なされたわけだし。皇統の相続権は戻らないけれど妥当でしょう」
 イレブンを人間扱いした変人皇女。そのせいで世界各地に特区日本に続く声をあげさせ、戦乱を拡大した戦禍の姫君。傾国の皇女。
 その全て、ユーフェミアが皇族に戻る前も今もささやかれている声だ。特区を率いる人間は皇族でない方がいいと最後まで抵抗したユーフェミアは、ブリタニアの圧力に特区がつぶされようとした期を境にルルーシュに先だって恩赦を受けて皇籍を返還した。次いで、ルルーシュが皇族として末席に身を連ねナナリー姫も今はともに居る。スザクがブリタニアに来たのは各地に広がった戦禍を鎮圧するために駆り出されたせいだ。ラウンズのこの二人には戦場で出会った。
 ユフィは、たくさん罵られながら、それでも戦うと決めた。無益な血を流さないために、捨てたものを拾い上げて、それでも最後までかたくなに皇統の相続権だけは放棄すると言い放ったユーフェミアは、特区に骨を埋めるのだとその言葉に代えて宣言したのだ。だからスザクも今一度戦いに身を置いている。彼女のそばで支えるために。びっくり箱なユフィと頭が回るのに抜けてるルルーシュが心配でならなかったとか、そんなことがないとは、言えないけれど。(ナナリーも言っていたし)
 再び渡された騎士のあかしは前と同じ、しっくりとスザクの胸に納まった。身分を明かしたナナリーはこれからルルーシュとユーフェミアの庇護の元で十重二十重に守られて生きていくだろう。そして、いつか兄と姉を支えるためにとつたないながら努力を惜しまないことをスザクは知っている。
 騎士団を影ながら支配しながら日本の軍事力を解体し、再編を進めて、人事にそつなく中華連邦から良く領土を守っているルルーシュを知っている。
 そして、ずっと行方不明だった兄妹を注目の的から守る矢面に立って、いつだって笑ってるユフィを知っている。
 その彼女を侮辱されて許せるはずもない。ただでさえもう半月も離れていらいらし通しだったのに、何故こんなに日本とブリタニアには時差があるのか。
 それでも、あんな言葉を突きつけられて決闘騒ぎまで起こしてしまった手前、離れていて良かったなあとはちょっとだけ思ったけれど。まさかラウンズにスカウトされるともおもわなかなったし。
 ぐるぐる頭が回ってるスザクのとなりから、アーニャがいつの間にかスザクから携帯を取り上げた。ぱしゃっとシャッター音とたかれるフラッシュ。そのまま高速で指がメールの文面を打ち付けて、ぴっと高く音が鳴る。気がついたら画面に踊るSENDINGの文字。
「……なに?」
「事と次第をユーフェミア様にご報告したの」
「あ、俺もしといた」
 いつの間にかジノの手にも携帯が握られていて、画面をスザクに向ける。そこにTransmission Compleatedの文字が表示されている。日本語に訳せば送信済み。
「……アーニャはともかく何でジノがアドレス知ってるんだ……!?」
「スザクがこっちにいる間何かあったら教えてくださいねって仰られて」
 ぶっはと吹き出したスザクの隣から、軽やかな音楽とともにアーニャの携帯が鳴った。
「あ、返信?」
 ぱちっとボタンを操作しながら画面をスクロールしていく。スザクは固まって動けない。
 黙って居すぎたことが大きすぎる。ユーフェミアならスザクの栄転を喜んだだろうし、自分にかまわず上へ上れとも言ったかもしれない。でもスザクの望みはそこにはない。特区日本と、仲間たちと、何よりユーフェミアのそばにある。命も誇りも何もかも。
 沈黙したアーニャが、スザクに向かって画面を見せた。覚悟して、痛烈に目を閉じていたスザクがまぶたを開いて画面をのぞく。
 どうして黙っていたのだとか、ひどいとか、決闘なんて危ないことをとかいろいろと覚悟しながら。
 だが、スザクはただ一人、これから先、一生、ユーフェミアのための剣であり、スザクが守るのは彼女の全てだ。スザクが剣をとる理由はユフィのためにある。だからこればかりは譲らない、と顔を上げて視線を厳しく。そこに飛び込んできた言葉は短かった。
 
 
 Title
 今ジェット機に搭乗手続きを済ませました。
 Subject
 アーニャ。特区はルルーシュに任せてきました。心配しないでってお伝えくださいな。
 
 
 
 笑顔の顔文字で終められた文面に、無言で立ち上がったスザクは落ちていたジャケットを羽織って逃げ出す手はずを整えた。皇族専用のジェットは二時間で太平洋を渡る。無駄に早い。そのスザクの首根っこを捕まえたジノが、にこっとさわやかに笑って携帯画面を差し出した。
 
 
 Title
 ジノ・ヴァインベルグ卿殿
 Subject
 スザクに逃げたら泣きますってお伝えください。
 
 
 そっと顔を伏せたスザクは静かに何もかもをあきらめて、黄昏れた表情を窓の外に向けた。ぽふんとアーニャがソファに座り直したスザクのくせっけを撫でる。ぽんとジノが肩をたたく。
「姫を泣かせる騎士は居ないよな」
「そんな騎士は騎士の風上にも置けないから、成敗」
「……なんでそんなに息が合ってるんだ二人とも」
「スザクをいじめるのは楽しい」
「スザクとあの姫より阿吽じゃあないから安心するといいぞ」
 だから先ほど、救急箱を取りに行ったアーニャにお前らほどじゃないと言った訳か。最後の最後に、スザクの携帯電話が鳴った。イレブンの持つことのできなかった携帯電話。騎士となったスザクには携帯が許されているが、もうすぐテロリストの活動の解体が本格的に終われば、誰だってもてるようになる。
 画面を見れば、ユフィのフルネームがきれいなイタリックで描かれている。
 
 
 Title
 スザクへ。
 Subject
 お説教です。
 
 
 かわいらしいハートマークが語尾に付いている。のぞき込んだジノが愛されてるねえと陽気に笑って、項垂れたスザクの肩に肘をおく。
 ぱしゃっと撮影したアーニャは、機上の人に向けて、メッセージを送った。
 
 十分凹んでいますから、もっと凹ませて、それから甘えたらいいと思います。
 
 返信はすぐに帰ってきた。
 
 違います。私がスザクに、でなくて。
 私がスザクを、甘やかさせるんですよ。
 ナナリーにもまた会いに来てやってくださいね。
 
 
 最後にユフィ、と署名が入って文章が閉められる。
「愛されてるね、スザク」
「……とっくの昔に知ってたよ」
 珍しく、年相応にすねたスザクがふいっとそっぽをむいた。こんな仕草を、この姫はずっと見てきたんだろうなと、ふと思って、あったかな気持ちになる。ジノにしか気がつかないような、小さな笑みを浮かべて、ジノはそんな二人を見て、満足げにまた笑うのだった。
 これもまたおそらくは幸福な日常。
 
 
 



 


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プロフィール

ゆつき

Author:ゆつき
日々徒然。
何とか生き延びている。
うっかり突発小話ありけり。
何が出てくるか解らない。
おそらく切羽詰った精神状態で出てくる故注意が必要。


おねがいごと。
小話の続きは、コメントのほうに私が書き込んでいますので、小話への直接コメントはご遠慮くださいませ。

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