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貴方へと至る道

テストの時ってなんで掃除したり買い物したくなったりネタを書きたくなったりするのかなって思っ(う あ あ あ あ あ あ)




fate弓凜とか。
Fate桜ルートネタバレ御注意。これからPS版やるよという方は絶対見たらいけない。


黯い。
無明の中に立っている。
ひょうひょうと風が肩を渡り、振り返れば翻る己の黒髪が見えた。
その色すら空に溶けて。
風に踊る髪の先をじっと見つめながら、そっと耳元を抑えた。指先にしなやかに絡まり、抑えるだけでは大人しくなってくれない。
その視線がゆうるりとぼかされた。焦点を変えて遠くを見た。視界の先に何かを見たからだ。
びょうびょうと渡る風の中、ぱちぱちと肌に何かが当たるのに顔をしかめる。痛い。砂混じりの風だ。此処は砂礫の中、向こうに緩やかな丘がある。丘が――。
碧い瞳を怪訝に顰めて彼女は歩き出した。緩やかだが、その形が歪に思えたからだ。何が歪なのか判然としないが、確かにその様は歪であった。濃い臭いがする気がするのに、砂混じりの乾いた風にかき消されて何の臭いか解らない。
視界は暗い。だから、近づいてみないと、この歪さの正体はわからない。
小さな足を踏み出して、一歩、二歩。
三歩。
「きみはきてはいけない」
突然大きな右腕が己の行く先を遮った。
邪魔だ。
「どきなさい」
少女は意志が強かった。何人もその意志を曲げることを矜持が許さないほどの、揺るがぬ精神の強さを身の裡に秘めていた。自らの行く路を妨げるなど、以ての外。許し難い行為である。
「道を空けなさい。あそこに行かなくちゃいけないんだから」
「なぜ?」
なぜ?そんなこと。
「知らないわ」
歪な丘を見つめていた少女の瞳が強い光をはらんだ。異国の血が混ざった美しい光だ。それは反発を呼び、行為を呼び、それが憎悪だろうと愛情だろうと人を惹きつける輝きだった。この光を少女を止めたものは憎みもしていたしまた愛してもいたから、彼女をここから先へと進ませるわけにはいかないのだ。
「知らないか。その程度か、応えられんのなら、ますます進ませるわけにはいかんな」
嘲笑が口元を彩る声に、少女に気配が固くなる。それなら実力行使だ。こんなところで、足を止めていてはいけない。自分はあの丘に至らねばいけない。「あいつ」のために。
「繰り返すが君はあの丘に行く必要がない。今となっては行く意味がない。なぜならこの運命はもはやあの丘に至らないのだから」
「――なにをいうの?」
「あそこには何もない。愚かな骸があるだけだ。凜、君ならたどり着く術はあるだろう。だが君は君なればこそ辿り着かない。君はアレの力を必要としない。
君は自信の力で往くべき斬り拓く。おのが身に余る愚かな願いを愚かな方法に頼ってまで歩もうとはしない。その場合も、正々堂々と、己の全てを使って、おのが身の全て「だけ」で君は行くだろう。だからあの力は君に必要ない」
「何を言っているの?」
「世界は君を選ばないという話だ。君も世界を選ばない。あの丘は――」
振り返る、赤い背中。見上げるほど背の高い人の影を踏みながら、砂礫の中に呆然と立つ。
「私が絶望に至る丘だ」
焦点が合った。目の前の男にはっきりと、遠くの丘にはっきりと。数え切れない屍の群れと頂上に貼り付けにされた血まみれの骸。千を越える剣が生えた砂礫の大地。
一瞬にして己のいる世界の在り方を理解した碧い瞳が見開かれた。何だ、此処は何だ。
「世界が選ぶ場所。此処は魔術的な固有結界ですらない。抑止力の働く世界にとても近い場所」
ゆるりと右腕がたなびく髪をゆっくりと撫でた。小さな頭を抱いて、呆然とする少女の黒髪を撫でてやる。風に千々に乱れた髪が、この世界を理解した少女にもたらされた傷のようで痛々しかった。
「精神の混線か。珍しいがよくあることだ。最後の最後でこんな事になるとは君らしいが、何、問題はない。君なら難なく元の場所に戻れる」
「アーチャー」
「気にすることは無いと言っても気にするのだろう。魔術師としての暗黒面と一人の少女としての精神面を両立できる歪な精神性はとても魔術師向きな気質ではあるが、君は少々雑多なことを気にしすぎる。ここにきたことは忘れるがよかろう」
「どいて、アーチャー」
「幸いなるかな、私はじきに消える。混線していた精神が消えるなら君は迷うことなく戻れるだろうさ」
「アーチャー!」
男の言葉を遮る術はもはや無い。再三制止のこもった少女の悲鳴は砂塵の中に崩れていった。
必死に両のかいなを伸ばして、背伸びをして首に腕を回す。酷い怪我を負ったのなんて構っていられない。必死に抱きしめる。そう、酷い怪我なんて――

どうしてひだりのうでがないの?

もはや血の一筋も流れ出でず赤い肉と骨をむき出しに、肩先からごっそりと無くなったもの。己のもの。これは己のものだ。己の一部だ。
自分の体を支えるべきこのしもべの腕を誰が、誰が勝手に持っていたのか。誰が許したのか。この私のものを。持ち主に、この己に、断りもなく!
「仕方がない。使えるならば使うべきだろう」
「誰がそれを許したというの」
殺意のこもった声が響いた。苛烈な炎が高温で音もなく燃えて己の的を射んとしていた。見なくても解る、それこそおのが主の気性。愛すべき気高さ。
「許したのは君自身だ」
「何を馬鹿な」
その瞬間の少女の殺意はこの男にこそ向けられた。間違いなく、己の意志を曲げんとするもの、改竄せんとするもの、全てに容赦なく等しく向けられる排除の気配。一片の慈悲もなく、冷厳たる殺意だけで目の前を掃討できる魔術師の瞳。この気高き魂を持つ身を守れたことこそ身の誉れであろうと、一本しかなくなってしまった腕で彼は静かに少女を抱いていた。
「くれてやる先が些か気にくわないがあのえみやしろうは私の標的とすべきえみやしろうではなくなった。そして君と、君の大切な妹を護るだろうよ。だから別にどうということもない、やっても構わない。えみやしろうを生かし、己の妹のために、私の意志ゆえに、そして君自身がずっと願っていたことのために。君は許すだろう。だから許したのは君だ」
「――アーチャー?」
「遠坂ごめん、おまえの妹を殺して、救えなくてごめん。俺は桜には謝る資格もない。でもこの世界は違う未来を選べる。あの子を殺して何処にも行く路が無くなって転げ落ちるように、多数を護ることしか選べなくなった。そうでなくちゃ桜を殺してまで護ろうとしたものの意味を踏みにじることになると思ったから。でも今度は、遠坂は桜を護ってやってくれ」
腕の中、鼓動の音を聞く。この傷でまだ鼓動が動き、体温が鋼の体を覆っている。腕の中で悟った、解っていた真実を。「  」はもう人ではない。これはサーヴァント。
「遠坂が一番、ずっと、ずっと願ってた護りたかったものを、今度こそ、悔いなく護ってやれ」
血を吐くような思いを込めた静かな湖面のように穏やかな声音にただ瞠目するしかなかった。
「……サーヴァントを犠牲に生き残る不甲斐ない主によくもまあそんな台詞を吐けるものね。どんな理由があろうと、私の本心がどうであろうと自分のものを断りもなく殺された復讐をわたしは果たすわ」
「そうして君は真に討つものをその怒りのまま、冷酷に討て。どうせ最後には親愛なるわが主は、悔いがあろうと傷痕があろうと必ず己が路を行くのだから」
「――あんたなんて大嫌いよ、どうしてわたしに黙って逝くの」
「それが君を護るに最上の術だったからかな、凜」
密やかに笑って、隻腕の英雄が目を閉じた。その瞬間世界は消えた。




柔らかな。
桜色におおわれた丘の上に真昼の青空の天涯が広がっていた。樹齢何年だか等知ったことではないが、きっと長の年月をこの地にて一歩もも動かずに見つめ続けてきた櫻の木が今年もまた花を咲かす。手のひらサイズの小さなデジカメを器用に操作して色素の薄い髪を翻しながら桜が春の穏やかな気配をデータに納めた。去年送ってもらった写真が綺麗だったと言うと、桜が嬉しそうに、照れて笑った。
「先輩が買ってきてくれたデジタルカメラで撮ったんですよ。家にあるカメラは古いから、この際デジタルカメラにしちゃおうって。画像も綺麗だし、お手軽で大活躍なんです」
終始控えめで野に咲く花のように笑う女の子だった。今はそれでも明るく笑う。しおれそうな儚さはない。どんなに控えめでも、頑張って葉を広げて太陽の下で賢明に生きようと笑顔で居るために花咲くようなたたずまい。
ぱしゃりともう一枚納めて、桜が振り返った。色褪せた赤いリボンが桜の髪で花の香りのする風と一緒に翻った。
小さな頃この子の美しい黒髪を結ってあげるのは私の役目だった。
「ねえさんも写真撮ってみますか?」
「やめておけ桜、壊されるのがおちだぞ」
ひょいと小さな手のひらからカメラが奪い取られる。
その視線の先で赤毛の青年が小柄な桜をため息混じりに見下ろしていた。
「折角奮発して新調したのにそんなことになったら大変だろう」
「でも、壊れたら先輩直せませんか?」
「これは壊れた石油ストーブとかテレビとかと違うって……」
「二人とも、それは決闘の手袋と受け取って相違ないのかしら?受けて立つわよ」
華麗な笑顔を振りまいて、ゆるりと腕をまくり上げようとするとものの見事に二人が凍り付いた。機械音痴が功を奏してデジタルカメラが壊されるより先に、今にも武力行使に訴えてこの身共々破壊されようとしている危機にようやく気がついたか。全く平和ボケしている。このガントの威力を身を以て知っているだろうに。
「ほ、ほら、二人とも櫻の下に並べ。撮ってやるから」
慌てて話題を逸らしにかかった青年を獲物を見つけたネコ科の笑みでじっと見つめてやるとわざとらしく視線も逸らしにかかる。だが、その言葉を受けた獲物のもう一匹は僅かに頬を染めて俯いた。おやまあ、可憐な風情である。
「ほら、桜」
冷や汗を流していた顔は何処へやった、と問いつめたくなるくらい穏やかな笑顔で華奢な肩をぽんと叩くと、桜がちらりとこっちを見つめ返してくる。
「あの、その、姉さん」
「なあに?桜」
一瞬ほだされそうになるが、なぜかにやにやとこちらを見る桜の背後の青年が気に入らない。ガントの発動をちらつかせてやってもひかないんだから天晴れだ。お望み通り二、三発打ち込んでやろうかといよいよ回路を発動させかけて。
「ゎ、わたしと一緒に、写真、撮りませんか?」
「――はへ?」
「だ、だって、もう半月もしたらまた英国でしょう?今日は天気で丁度お花見のお日和で、それに、先輩との写真も藤村先生との写真もライダーとの写真もいっぱいあるけれど姉さんとの写真が少な……あ、いえ、姉さんの、姉さんの写真が少ないから!」
つまりはこうだ。――自分と一緒の写真を撮りたいと。
そんなもの。
遠坂の家には一枚も、残っていない。桜があの家の子じゃなくなってから桜という娘に関する記憶は一切が消去された。僅かに残るのは魔術の家に残る記録くらいなもので、桜に関するものは何も。今、新しく、遠坂の家には桜の部屋があるけれど、でもそこに過去はなくて。勿論、過去の写真なんて何処にも。
ばふっと顔が赤くなるのを感じた。
それを見て青年が笑いをこらえて急いでばふっと口元を抑える。
この姉妹は姉妹として当たり前に過ごしている時間が殆ど無いに等しかったのに、お互いのことが大好きで、それなのに姉の方は無類の照れ屋で妹の方は並ぶもの無き引っ込み思案なので、こういった光景を、一緒にいるときは随所に見つけられる。初めて姉さんと呼ばれたときのこいつは大変見物であったと懐かしい昔を思い出して、少し強く、桜の肩を押し出してやると、とまどった桜の視線が青年を見上げた。何のかげりも心配もなく視線に答える変わりに、笑い返してやると、桜が頬を染めたまま凜の袖口を掴んだ。
「ほら、折角花が咲いてんだからあっちで撮ってやるよ」
櫻の木の下を示してやれば、嬉しそうに笑って、桜が姉の腕を引っ張った。
「……姉さん、こっちです!」
「ちょ、ちょっと、桜っ」
殺意は本物、この魔術師の中に永久に溶けない氷となって高温の炎のように永遠にあり続ける。忘れえぬ左腕の痛みは永遠に続く。失ったものは他人ではない、己のもの、己の一部であるのだ。
けれど妹を。
「写真、先輩に頼んで焼き増ししてもらいますね。あの、その、よかったら、持って行ってください」
花のように幸せに笑う傷だらけの妹を心底いとおしく思うこの気持ちは全て己の真実だった。どんな憎悪を持っても己の命を捨ててもああ駄目だこれはと思ってしまった。殺されるまでこんなに愛しているなんて気がつかなかった。
貴女よくこの子を殺せたわね。私はなんか絶対無理みたいよ。あなたを喪ったのに、私の一部を喪ったのに、この殺意は何処までも真実なのに。
それでも私はこの子を殺せない、魔術師として冷酷に残酷に殺すべきだったこの子を、なのに殺せない。
憎しみも、愛しさも、全て私の真実。この先一生、この往くべき路であり、背負うべき業である。だが憎しみより大きいのは再会への欲であり、それより大きいのが今を手放したくないという弱さだ。
あの丘に至る道程を考えなかったわけはない。喪ったものに逢いたかった。ただそれだけの理由で人智を越えて世界に喧嘩を売る術を模索した事など、一度や二度ではない。それだけの力はある。そのたびに、この子から櫻の花の写真が届いたり、あいつの馬鹿なドジ話を聞いたりするから、何度もその道を進めない。これは抑止力が働きそうな処に行って自分を抑止力に取り込ませるとかしなくちゃ駄目だなと思って、それからゆっくりと己自身が否と叫び、意見するのだ。己は魔術師だ。深淵の探求者。己の全てを己のみと定義し、己以上の力には決して縋ることはない。例えばこいつらを護るために世界と契約を交わして力を手に入れるような、己の力ではないものを以て驚異を凌駕することは出来ない。魔術師の遠坂凜としてこの身は生きているから。魔術師として己の力を上乗せするためならどんな反則技でも使う用意があるが、己以外の力に頼ることはない。身一つ、それだけが魔術師が絶対に信用する力だからだ。
だからこれからも、傷痕が山ほどあり、一片の悔いを背負って歩く。そうね、あなたの護った私はこの子をあなたの分まで私ごと一緒に護るわ。

それが多分、あなたの標的とする価値の無くなったあいつを護ることになり、そしてあなたをも護る術となるのでしょう。

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プロフィール

ゆつき

Author:ゆつき
日々徒然。
何とか生き延びている。
うっかり突発小話ありけり。
何が出てくるか解らない。
おそらく切羽詰った精神状態で出てくる故注意が必要。


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