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せかいはやさしくないけれど@ギアス小話

こどもたちのしあわせをねがうはなし。


特派黒幕と姫。拍手こぼればなし。
携帯からは久しぶりになりました。


皇族たる女性がこうも無防備に横たわる姿をさらすことがあるとは思わなかった、というのがセシルの偽らざる本音だった。
姫君としてのたしなみとか、淑女としての世間体とか、警護上の問題とか、ユフィが回りに対して無防備でいられない理由はまいきょに暇がない。
でも実際に、ラボの片隅の小さなソファの上でねこみたいに丸くなっているのは、真実ユーフェミア姫なのだった。
こっそりと顔をのぞかせたのは最近試験期間に忙刹されていた彼女の騎士の様子を知りたかったからだ。それも勉強や軍務で忙しくしているだろうから、妨げになってはいけないと本当にこっそり顔だけをみて、差入の焼き菓子を置いてすぐに帰るつもりだったらしい。
ほほを染め、突然、ごめいわくをかけて申し訳ありません、と頭をさげたのは大国の姫ではなく年相応の女の子だった。なんともいじらしいではないか。
とにもかくにも、スザクが戻るまでに時間はまだある。恐縮して辞そうとするユフィに微笑ましさをいだきつつ、ソファを勧めた。
「せっかくいらしてくださったのですから、彼が戻るまでお待ちください」
「……ごめいわくではないでしょうか?」
眉を曇らせたユフィにセシルは朗らかに微笑んだ。
「はい、大丈夫ですよ。こちらこそたいしたおかまいも出来ませんが、よろしかったらどうぞ」
ラボの片隅の小さなソファを示されて、ユフィはそっと隅っこに腰かける。
それでもまだユフィはおちつかなげに身を小さくした。
非常に専門的かつ時には危険な機器も取り扱うため慎重さが求められる、機密も多く扱う部署だ。まるきりの素人が許される場所ではない。
その上、ここに籍をおくスザクはユフィが預かる騎士だが、もともとは兄の直轄の部所だ。副総督たるユフィが頻繁に出入りして外聞がよいということは決してないのだ。
会えないのは寂しい。数日が我慢できなくて勢いだけで公休の予定を決めてしまったけれど、やはり辞して帰ろうかと不安になりかけたころ、うつむいた視界に白く湯気がのぼるマグが差し出された。
腕を伝って視線を上げると、セシルがにっこり笑っている。
「ホットミルクです、どうぞ」
ふんわり白く、カップの縁をわずかに泡立たせて温かなミルクが満たされていた。甘いかおりがほほを擽るのに誘われるように手を伸ばして受けとる。小さな手に大きめのマグをのせながら、あついですから気を付けてとセシルが言った。
猫舌なりに息をふきかけ精一杯冷ましてから、熱いミルクを一口のむと、心がほどけて行く気がする。
「ありがとうございます。ホットミルク大好きなんです」
綻んだ表情を嬉しげにセシルが見て、自分用のコーヒーのマグを傾けた。
「知っていますよ。スザク君がいっていましたから」のうべんにかたるわけではない。言葉の少ない中で、ユフィにかんする話題が少しずつ増えて、溢れて、なにかの拍子にほろりとこぼれてしまう感じ。慈しむように翠の瞳をすがめるさまは、彼の苛烈な経歴のきずを真綿で撫でるようにいやしている気がするのだ。
スザクが、と呟いてほほを染めた少女ははにかむように笑って、白い湯気の向こうに顔をかくしてしまった。


「この頃酷くお疲れのようなんです」
眉を曇らせたスザクがこぼした。無理もないことだ。お飾りとは言われようと普通ならまだ庇護されてしかるべき年齢で、大人たちの重要な責任のただなかに放り込まれたのは本当に大変なことだ。
疲れているなら甘いものを奨めたらどうかしら、と言えば少し苦しげにスザクが笑う。
「はい、甘いものがほしくなるみたいで、ホットミルクをよくのんでいて…本当に疲れてるときはいつものお茶よりミルクティかホットミルクをのんでましたね」
そのあと、疲れきったようにうたた寝をしてしまうのが心配だといっていたのはいつだったか。
疲れきって情緒が少し不安定で無防備になってしまったユフィは、いつものぐいぐい周りを巻き込む元気さもなりをひそめて、しおれたすみれのようだった。寂しいことを素直に口に出せない立場に自らを押し込めて、どこにもいけなくなくなったこどものような。備え付けの毛布を小さな少女にかけてやりながら、はやく彼女の騎士が戻ってくるのを願う。警戒心の全てをなくしても構わない彼女の騎士がそばにあることを願う。大切な人のそばにいたいなんて、当たり前のことを願うだけで、まわりを気遣わなければならないふたりのこどもが、歯がゆくて切なかった。
まだまだ幼いこどもたちが、少しだけでも、まわりのしがらみを全部忘れて大切なお互いだけを思い遣れる時間をわずかに捻出することしかできないけれど。
自分の無力さに溜め息をつきたくなる。世界はこのこたちに優しくなくて、セシルは世界を変えることはできない。
でもなにもしないより絶対にましなはずだから、と思い直してこれからのタスクを洗っていく。上官をデスクワークにがんじがらめにすれば、スザクの予定は空くだろうと容赦ない見積もりを出してから小さな肩に毛布をかけなおして、そっとセシルは側のコンソールに向き直ると、仕事の予定の調整をはじめるのだった。

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プロフィール

ゆつき

Author:ゆつき
日々徒然。
何とか生き延びている。
うっかり突発小話ありけり。
何が出てくるか解らない。
おそらく切羽詰った精神状態で出てくる故注意が必要。


おねがいごと。
小話の続きは、コメントのほうに私が書き込んでいますので、小話への直接コメントはご遠慮くださいませ。

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