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その十二時間後。↓

ほぼ一日寝てしまいましたしかし未だ眠い罠。 orz
頑張れ負けるなちからのかぎり!と言うわけで、アルシェリだけでもアップです。前アップしていたものに、加筆修正を加えつつ、過去の自分の文章にもんどり打っています。やっぱりシェリルは良いなあとにまにましながら今度カラオケでフラストレーション発散してきたいです。飲み→カラオケ。月一は行くよね……(そろそろはっちゃけ過ぎだと思い始めました)や、でもFはいいです!本当に良いです!シェリル愛してる!

GHにギアスにFに鋼、全部自分なりにかき分けているのですがギアスとFは区別が曖昧です。薄桜鬼はGHに近い文章になりそうな予感がひしひしとしています。鋼はすべてをごたまぜにしたような……。知人にばれたくない。たとえ自己満足と言われようとこの一言が努力の源!!!!
ところで昨夜某所チャットで遊んでくださった皆様、ありがとうございました。タコは衝撃的でした(笑)その後さらに、いろいろと衝撃展開が待ち受けていたのですが初心者その二はおろおろするばっかりでしたよー!!(笑)(なんか沈黙なさってるなーと思ってたら)(衝撃すぎましたよ!?)(閉じましたよ!!)(笑)

ところで凄く懐かしい文章が出てきて吃驚しました。あとでこじこじと直しつつ、保存目的とオトメつながりで(笑)おいておこうと思います。以下ともまさあかねで遙か1。地の玄武と天地白虎が1ではすきでした、懐かしいなあ……ってやばい二桁近く前の文章だった直すまで誰も読まないでくださ…!!(直す時間がない件)(悶絶)(大汗)

 悲しみと苦しみの鎖がある。此の魂を強固に繋いで、はなさずに。
 見つめているだけでしかない、悔しくて無力な自分がただ厭わしい。目の前で声を殺して、心が慟哭するのを堪えている友人を見つめながら、ただ肩に触れることさえも――何も出来ずにいる自分を必要以上に自覚しながら、深すぎるやるせなさに、空に浮かぶ有明の月をただ、臨んだ。
 
 妹が都の怨敵とも言える人物に拉致され、言いように利用され、饑饉を呼び汚れを呼び疫病を呼び――。
 らん!
 叫んだ、身を挽き裂かれるような声に、どんな言葉をかければ、何をしてやれば良かったのか、自分は未だ、解らない。
 幼なじみは誰も寄せ付けないまま、夕餉にも顔を出さずにただ一人心を伏せている。
 空は未明のまま、明けぬ。
 

「ただ、悔しいんです」
「何がだい?」
 低く柔らかに響く声は、少女の心の底の琴線を確かに弾いて響かせる、そんな声だった。
 その声が本当はあまり好きではなかった。
 こちらの方は何もかもを見透かすようで居て、自分の内側は何一つ見せず、そのくせ振り向かずにはいられない声だからだ。そういう雰囲気を、声だけといわず存在そのもので体現している彼を、少女は苦手に思っていた。
 ただ、それが彼の存りようなのだと認めた後は、敏に察して気にかけるよりも、慣れて行くのが、苦手に思っていることを気づかれしない一番の方法だと早々の内に少女は悟って知った。そして慣れとは恐ろしいもので、彼の持つ声や仕草の前には、彼女持ち前の気丈さなどは猫の仔をあやすより容易くあしらわれ、今では他の仲間達には建前上は言いにくいことでもさらりと口に出してしまい、思わず自分で首をひねるという日々を送っている。
 今では時折ひょっこりと、今宵のように庭先に顔を出してはいつの間にか帰っていく、そんな気まぐれを彼は見せる様になった。
 夜と限る場合だけではなく、深夜であったり、宵の口であったり、夕方、朝方、昼間でも関係なくふらりと顔を見せていくのだ。自分を警護する優秀極まりない人材の目をどうやって掻い潜っているのだろうとしみじみ思うが、聞いても教えてくれないことは解っているので無駄なことはしない。しかも来るのは決まって、自分が胸に何かを抱えているとき、他の八葉には勿論自分の第一の味方である妹のような少女にも、何も言えないとき。いつの間にか口は軽くない方と自負する自分の口を軽々割って、蟠りをほぐしていくのだ。そうやって手のひらで踊らされることは少女の一番に嫌うところだったが、彼とは人生経験が違いすぎる。諦めるというよりもこちらは割り切った、そうでなければやっていられない。ただ、時折けんか腰になることは否めないけれど。
 それにしても彼はこんなにも話しやすい人間だっただろうか。考え込んでも初期の印象はあまり良くない、むしろ自分の一番の味方でもある少女に、近づくなと釘を刺された第一の人物だったりする。
 有明の月を見上げると、板敷きの縁側に少女の影が硬く浮かんで影も一緒に月を仰いだ。さらりと桜の色をした肩の辺りでそろえられた柔らかな髪が背中に流れて、細い少女の面を月光の光のうちに露にした。
「何も、出来なかったことが、でしょうか」
 冴え冴えとした月明かりは既に西に傾いて朝と共に消え行くだろう。ふと空を眺めるとちりばめられた星の光がガラス片のように光った。
 この光は故郷の星と同一なのだろうか。以前星座に興味はなく、ただ見上げるのが好きだっただけだから、今こうやって、臨んで見上げる星明りが同じなのかは少女がわかることは無かった。
 静寂は少女の声音のみで揺らぎ、その揺らぎは夜のしじまに相応しく、はかなく解けて消えていく。
 傍で見守る男は欄干の柱に瀬を預けてさりげなく風下の少女を花冷えの風から遮った。少女はそれに気が付いて月を見上げたままで居た瞳を、光の中で繊細な影を顔に落とした男を見上げ、微かな風に乱れた髪をそっと衣擦れのような音で掻き分けた。
 ただ何も言わない男は、少女がこの夜に相応しい声でささやかに揺らす闇を乱さないかのように傍に居た。それが自分の話の続きを促しているのだと勝手に解釈して微かに瞳を下へと伏せた。
「悲しんでいたんです、そして自分を責めていたんです、いつもいつも。自虐的なまでに。あんな性格をしているから解らないかもしれないけれど、妹が失踪したことは全部自分のせいなんだって、言っているみたいで」
 ゆうらりと視線がさまよい、縁側に下ろした裸足のつま先を見つめた。雨だれの跡が残る庭先の向こうには美しい庭園が広がっている。この屋敷の主の権力を誇示するべく。
「あの天真が、そんな事を言っていたのかい?」
 長く波打つ髪が微かな風に揺れている。纏った香の涼やかな香りが風下の此処まで微かに乗って泡沫のうちに消え去った。
「故郷では、何も。何も言っていませんでした。けれど頑なに何かで自分を追い込んで、必死に何かを探しているのは見ていれば解ります。彼女が失踪した原因は自分だと周りから言われて反発しても、一番そう思っていたのは天真君ですから」
「なぜそういうことになったんだい?普通は家族が失踪したなら、その家族を気遣うものだろう、周りの連中は」
「ええ、普通は」
 少し少女が笑みを浮かべた。はかない様なその笑みは、いつもただひたむきに前を見つめる少女にはどこか雰囲気が異なって、それなのに不思議なほどに良く似合う。彼女にそんな表情をさせる存在がふと、心に引っ掻きを作って内心で柳眉を潜めた。けれどそんな事はおくびにも出さずに、微かに首をかしげて先を静かに促すと、少女は視線を軽く上げて闇にひっそりと沈んだ男の顔を見上げた。
「天真君、はっきり言いますけれど、ワルだったんです」
「……わる?」
 こくりと大真面目に少女は肯き、不似合いなほどの真剣さで先を続ける。
「一時期とっても荒れに荒れて手が付けられなかったらしいんです。不良だとか暴力団に出入りしてただとかその恨みを買って妹を拉致されただとかそりゃあもう言いたい放題」
 ふう、と憂いて小さな唇がため息を吐く、華奢な少女の手が可愛く頬に添えられた。
 ふりょう、だとかぼうりょくだん、だとか、よくわからない単語が出てきたが文脈から見て、あまりいい言葉ではない気がする。拉致する、など乱暴というだけではすまされないような行為をしでかすのだろうと、周囲の人間がなんら疑問を抱かず想像する単語というからには、彼女の台詞から推察するに、この京で言う盗賊のようなものかと首をかしげた。
「確かに周りがそんなんじゃ、自分でも何をしていいか、解らなかったんじゃないかと思うんですがそういう時ってありますよね、そんな時自分を責めてもいいことなんか何も無いのに」
 ふわりと花の香りを乗せた夜風が優しく夜を渡っていく。庭園の木々が揺れる声が酷く響いて聞こえるのは、この世界に他に何の音も無いからだ。
 此処は酷く音が少ない。そして夜の明かりも少ない。手元にあるのは小さな灯りでそれも今は消えてしまって他には何にも無いから、見上げる星は痛いほどだ。京はつきがあるからまだ少ないほうだけれど新月ともなれば声を失うほどの数。いつまでも見上げていると吸い込まれていく錯覚を覚えることがしばしばだ。
「……そして今も、自分を責めている、と?」
「そう、天真君は何も悪くないのに。馬鹿ですよね」
 先ほどからぽんぽんと、威勢良く飛び出す少女の言葉に今度は思わず笑いをかみ殺した。
「神子殿は辛辣だね」
「友雅さんはそうは思わないんですか?自分の責任でないことで自分のせいだと悩むのは、自虐的に心を傷つけるのはただの馬鹿です」
「うん、じゃあこうしてここにいる君は?」
 過ぎていく風が耳元でさやかな音を立てた。ただ花冷えの香りを乗せて空へと帰って遙かに遠ざかりやがて大気をめぐらせる。風を追ってその視線を空の彼方に遅らせてから、ゆっくりと神子は風除けとなってくれている彼の陰を見上げた。
「大馬鹿です。人が傷ついているのに、それは大切な友人なのに、何も出来なかった。ただ肩に触れているだけで私は何も出来なかった。自分の責任でないことなのに、私も同じに傷ついている。そして起こった現実に何にも私は出来ないでいる」
 さらりとかみを指先が耳にかけて、聡明な光を孕んだ瞳が静かに伏せられ瞬いた。星明りのようにはじけた光が酷くはかない。
「その上、自分を断罪するためだけに人の過去を言いふらして友雅さんに頼ってる。私は愚かな子娘です」
 月光は天より白く辺りを浮かび上がらせ、深い闇から道を示し世界を淡く染めていた。静けさだけが壊れずに、可憐な少女のかんばせがただただ静かにほころんだ。
「この自らの断罪行為こそ、馬鹿げた自己満足に過ぎないと理解っているのに」
 風の如く、なんの音も残さず、いつも才気煥発に笑う少女がただいまだけは、酷く静かに微笑んだ。
 その笑みに静かに返すように友雅も微笑む。不思議なほどに深い色で瞬く瞳が酷く心に突き刺さって笑みを浮かべることが苦しかった。
「君は、話していいことと話せないこと、明らかにされる真実とそうでない真実を知っている。そうだろう?
 だが、確かに話して誉められる事実ではないだろう、けれどこれは隠しようも無い。我々は神子を守護する八葉であり使い捨ての利く木の葉だ。そして天真の妹御は、明らかに神子を付けねらう敵の一派であるからだ。遅かれ早かれ明らかにされる、それが彼の口からか、君の口からか、少し早いか遅いかの違いだけだよ、私にはね」
 優雅な指先が波打つ髪の一房を手にとりくるりと指に巻きつけてもてあそんだ。
「前に言っていただろう、私には話したくないことまで自然に話せてしまうと。そしてその時君が言ったように、私は君をそういう風に誘導しているかもしれない。それなら、君が話してしまったのは私の意図だったということになる」
「それでも私が話したという事実は不変ですよ」
 冷静な口調で指摘する少女に口元だけでまた笑みがこぼれた。
「ええ、でも友雅さんが話しやすいって言うのは本当、変わりません。多分一番私が神子だということに執着していないからでしょう。ああ、いえ、逆に執着しているからこそこういう態度に出るんですか?」
 ふと不思議そうに首を傾げて幼い少女が素直に聞いてくる。こちらをどきりとさせるような鋭さをのぞかせ、いつも聡い彼女は時折こんな風に酷く無防備になる。聡い女は幸せになれないとよく言うが、彼女は間違いなく聡い。それなのに無垢すぎる背反を何の矛盾も無く内封している所が楽しい。
「そういうことは、本人に聞くことじゃないんじゃないかな?姫君」
「そうですね、でも友雅さんのことを他の方に聞いても返ってくる答えは事実じゃないから」
 かきあげた髪が指の間からさらさらと零れ落ちていく。綺麗に通った節の手は、自分の物とは確かに創りや骨格から違う生き物だと知れ、ふと不思議な感じがした。
「確かに。でも私は自分のことを詮索されるのは好きではないとかいわなかった?」
「人を好きなだけ詮索しておいてその言い分は通らないと思いますけど?でも確かに以前利いていました、それなのに言ってしまってすみません」
「誤ることはないよ、君にならそれもまたいいかもしれない」
「教えてくれる気がないくせに、そういうことは言うものじゃありませんよ」
 幾人もの女性達を骨抜きにしてきた話術も何もかも、この少女には通じない、この鋭い会話が酷く楽しい。
 きしりと床敷きの板が軋んだ。月影に長く延びた陰がゆれて少女の背に近づく。
「そうでもないかもしれないよ?私は君に甘いから」
 見上げる視線が高くなる。離れた距離を縮めるたびに。傍で衣擦れの音が聞こえるほどに近づくと柔らかに雅な香が薫った。
「嘘をつかないでください」
 すっぱりと切り捨てる少女には確信があった。彼は自分に甘いのではなく、龍神の神子が物珍しいからかまっているに過ぎない。動物園のパンダと一緒だ。気にかけるときだけ気にかけて、飽きれば誰も似忘れ去られていく。ただパンダは可愛いから固定客を掴んでいつまでも愛されているけれど、自分が可愛くないことも綺麗でもないことも少女は一番良く知っていた。それが真実だとは限らないと疑いもせず。
「心外だね、私は、君に、甘いよ」
 齢の離れた妹に接するように彼はいつも自分をからかい、それに紛れて気遣いを寄せることは本当だった。ただその心の奥を誰も知ることは無い。水面に浮かぶ月のようにまるで実体が無い。はかなく透けていつ消え去るかも解らずに。いや、何処にあるかも、真の姿もわからずに。
 ふと笑みを消した少女が、微かに口元をほころばせた。髪の色彩と相まって、桜の花びらを何時か連想したことをふと頭の片隅でとも雅は思い出した。
「嘘です」
「私は女性に逆らえないよ、特に泣いている女性には」
「友雅さんらしい」
 一瞬だけ闇の中で出会った視線を先に逸らしたのは少女だった。庭園といってもこの縁先からは見渡せないほどの広さを誇った庭を見晴るかしながらさやぐ刻の声を聞くように目を瞬かせた。
「でも私は泣きません。私は弱いですから、泣きません。もしかしたら、泣けるほど情があるわけでないか、ただの意地張りかもしれませんけれども」
 瞬く瞳は星の灯りを孕んだ。けれど確かに、乾いていて零れるはずの涙は終ぞ流されることは無い。彼女がこの世界に落とされてから、涙を流したことをただ一度しか見たことが無いと、ふと思った。
 右も左もわからず家族友人と無理やり引き離され、そしてこの京に住む全ての人々の生命を否応無く背負わされた少女が。
 弱いから泣けない。泣いたら崩れてしまうのだと、おそらく少女は知っていた。
 伏せた瞳で足元に座る少女を見下ろす。その肩は細く、姿は華奢で、何処にでもいるただの娘でしかないのに、首筋に埋まる宝珠は彼女が神子である故の魂に宿った神気を確かに感じ、今も静かに共鳴していた。愚かだと笑う。この世界を。このような幼い少女一人に何もかもを背負わせ、我々が犯した罪全てを清算してしまおうという酷く御都合主義な世界を哂う。
「本当に自分のせいだって、天真君は傷ついていたんです。何故、と答えの出ない問いを、今もずっと繰り返している。でも本当は」
 ふと、それまで一筋も揺れなかった少女の声が始めて揺らいだ。酷く強い少女が、もろさを見せる瞬間だった。
 爪先のつめが月光を弾く。小さく揺らして青く茂る草に影を落として踊る。視線を伏せたまま、少女は一度目を閉ざし、そして再び光る月を見上げた。
 白い光を一身に受けると華奢な体と顔が露になる、まるでつきに焦がれるようにただひたすらに真っ直ぐと、その白い月影を見つめた。
「友雅さん、何故、天真君は私の傍に居たんでしょう」
 いきなりの問いに、ふと首をかしげた。彼女の意図がつかめなかったからだ。けれど彼の答えは期待していなかったのか、それともただ吐露してしまいたいだけなのか、自分の確信を形にしてしまいたいだけなのか、少女は先を続けた。痛々しいほどに。
「天真君だけじゃない、しもん君も。私そんなに男の子の友達が多いわけじゃない、其れもあんなに仲の良い友達なんてほかに一人だって居ない、その二人とたまたま一緒に、あの日一緒に居て、たまたま私が選んで誘ったあの井戸に一緒にいってくれて、たまたま私と一緒にこの世界に来て、たまたま、竜神の神子の八葉だった。其れも、たまたま、私と仲の良い人が。この確率がどれほどのものかわかりますか?」
 彼女は自分とは言わず、龍神の神子と区別を付けて物を言うことがある。
 静かな声が示しているただ一つの堪えは、聡い彼にわからないはずは無かった。その確信を込めた声が酷く痛く、胸に響くと同時にその事実に思わずはっとして顔を上げる。
「……たまたま、君と仲が良く絆が深かった天真たちが八ように選ばれたのかもしれないよ」
 それでも告げることが出来なかったのは、少女に対する気遣いだったのかもしれない。この強すぎる少女が、其れを望んでいないことを知っていたとしてもいわずに入られなかった。ただ月を真っ直ぐ見つめるその潔さのせいで。
「友雅さん、それじゃあ何故この世界で、京の中で友雅さんが選ばれた基準は何ですか?私とはついこの前知り合ったばかりで絆なんてありえなかった。他の八葉の方たちも同じです、それに」
 月に焦がれる物語の少女のように彼女は空を見上げている。その白い光の中でこれ以上に清い人間はこの世界には居なかった。ゆえに彼女は龍神の神子という柵に雁字搦めに囚われていた。
「それなら何で、天真君の妹がこの世界に来ているんですか?」
 一言の強さが重かった。言葉をつむごうとした友雅を遮るように、桜色の髪が揺れた。今更ながらに髪の掛かる項の細さに気が付いた。改めて、その頼りなさに。
「私が選ばれたから。私が龍神の神子だから、天真君としもん君が選ばれた。私が竜神の神子だから、天真君の妹が連れ去られた。そうだと、私は思うんです」
 ふと瞬いた少女の瞳が、驚くほどのもろさの発露だと、気が付いたのはいつだっただろう。
「螺旋、と言いたいのかい」
 呟きは酷く低く地を這った。深く響いて夜のしじまに消えていく。
「兄である天真が此処へ来た。天真の妹御が此処へ来たように。確かに、酷く、深い業だね」
 ふと風が空へと舞う。ただひたすらに静ずけさに、響く声だけが唯一の音だ。
「そう、なぜか私を取り巻く人たちが”京”の関係者なんです。天真君としもん君は私とは別々に知り合って、そして私を介して知り合った。私のせいで、私が居たせいで天真君が選ばれたとしたら?天真君の妹が選ばれたとしたら?詩紋君が選ばれたとしたら?」
 鈴の鳴るように連なった声が余韻を残してとどまった。そばに立つ友雅の深い色をした目を見上げ、桜色の髪が薄い肩から零れていく。
「友雅さん、私が来たせいで友雅さんは八葉になりました、私のせいで面倒なことに巻き込まれています。友雅さんは」
 ふわりとみやびな香の薫りが衣擦れと共に彼女を包んだ。綺麗な指先がつむぎかけた言の葉全てを閉じ込めるようにそっと花弁の唇に触れた。何の力もこもらないのに、静止させるだけの力が不思議と込められた。
「京に来るものは確かに選ばれた、それは認めよう。でもそれは、ただ力が強いものが選ばれたのではないのかな」
 席を切ったようにあふれ出した言葉は、酷く静かな声がただ連なるだけでまた静けさを取り戻した。少女の声が何処かか夜の底に沈んで、ただ交わす瞳だけが何かを知っていた。
「君を守れるだけの強い力を持った。そう、この京では術に秀でた安部の陰陽師殿を筆頭に、神子を守護できる実力と、能力、権力を持った人材が集められた。それは彼らを見ていればようとして知れることだろう?」
 確かに彼らは能力、実力とも飛びぬけていた。そんな事、日々傍にいればこの聡い少女にわからないはずが無かった。
 少女の言葉を待たず、その瞳が理解を示したことだけを見て取ると、友雅はいつものように微かに微笑んだ。
「なら、天真が選ばれたのは自明の理だ、彼は八葉に選ばれるだけの実力を持っていた。力は血筋にも現れる事があると聞く。だから天真の妹御も鬼に目を付けられ、この京へと連れ去られた。さあ、此処のどこに君の責任がある?」
 小さな子供に言い聞かせるように微かに首をかしげて小さな少女を覗き込む。さやかな衣擦れの音と共に手のひらが差し伸べられ、桜色の髪をそっと掻き分け、温かな頬に触れた。
 そっと傅く友雅の視線が近い。
「私の世界はここよりも地理的に広い、そして此処とは比べ物にならないくらいに、人口が多くて人口密度が高いんです、友雅さんが想像しているものの倍以上は」
 小さく小首を傾げ、少女はおとなしく視線を合わせたままだった。いつもなら警戒して離れていくところだろうに、なぜか不思議と穏やかだ。
 彼女の世界を語るとき、彼女はその瞳に郷愁を浮かべない。それはあまりに強くもろい精神の精一杯の自制なのだろうか。
「そこから、たった二人を選ぶ確立なんてどのくらいのものでしょうね。しかも二人ともが、私の、親友ともいえるほど仲の良い、数少ない男友達である確立は」
「言っただろう、君を守るありとあらゆる力、例えば彼らに対しては、信頼、かな。そういったものを持つあらゆる人材の中から選んで、結果彼らが該当した、それだけの話なんだろう」
 そこに、彼の妹が巻き込まれた事実に対する彼女の責任は存在しない。
 さわさわと夜の木々が歌うのはどこか怖い気がした。怖気ずくほど子どもではないけれど、怖れを抱かぬほどこの世界のことを知っているわけでもなかった。
 その何もわからぬ世界の中、こうして一回り以上違うそれまで全く出会ったことの無いような異性と有明の月を臨みながらこうして話している。それが何故こんなにも自然なのかが、解らなかった。
「まあ、何の証拠も無いけれどね?」
 推論に過ぎぬ、ただの慰め以下の代物だ。いつもなら安易に肯くことも出来ないだろう意見には、今はなぜか肯きたい気に駆られた。けれど肯くことは出来ない。
「それでも、”私”に巻き込まれたことには変わりません」
 龍神の神子、と彼女自身を区別していた言葉をあえて使わなかったことが胸のどこかを踏みにじった。神子と己は同一ではないと思う。でもやはり、同一であり、それは変わらぬ事実なのだ。
「君も巻き込まれたのではないのかい」
 そっと瞳が瞬くと、長いまつげの影が落ちる。温かい仕草で頬を撫でられ、首をかしげたまま柔らかな桜色の髪を揺らせた。
「龍神に、ですか?」
 ざわり、とその瞬間風がざわめきを発した。強い風の中不敵な光を瞳に宿らせ、向くな瞳を男は見下ろす。
「違うな…人間が神に祈るのは何故だか知っているかい?」
 さらりと少女の髪をすく。靡く袂の影にしまってどんな風にも当てずに痛いとふと思うが、風になぶられ、それを見据えて真っ直ぐに立っているからこその美しさもあると思った。
 そよ風に優しく笑みを浮かばせて、羽の軽さで振り返る可憐さもあると思った。
「人が……望みを叶えて欲しいから」
 暮らしの向上を望むため、金運、学術、仕事、物事の吉兆、そして下る罰さえも、全て人の望みなのだ。繁栄も、そして滅びも。
 神から見放されたとき何が起こるだろうか。そんな事、今まで居た自分の世界を見ていて解ることではないのか。
「そう、そして京の人間にとって祈るべき神は龍神だ。鬼が現れ滅亡の危機に陥って人々は祈りった。龍神はその願いをかなえた。そして神子を選んだ」
 強くなぶる風はあの時の一瞬、長い友雅の髪を激しくなびかせ、力を失った。乱れた髪のままで笑う彼は酷く綺麗だった。
「君はこの世界に生きる京の人間に巻き込まれたんだ」
 まるで彼の言葉を非難するように、はためいた風がついえた。今はただ物静かに。ただ弾劾の言葉だけが響く。
「でも、私は鬼に呼ばれた」
「それでも君を選んだのは龍神であり、龍神の神子は龍神に仇名す鬼のためには存在し得ない。君は龍神の神子だからだ」
 宵闇に言の葉が一つ筒重さを持って沈んでいくようだった。
「誰が呼んだかが問題ではないんだよ。誰が選んだのか、だ。君は龍神に、選ばれたんだ」
 瞬き一つ、なんでもないように落ちた瞼の下の瞳はいつもどおりの輝きだった。ただひたと何かを見つめて離さない。
「君を巻き込んだのは、我々のほうだと私は思うんだよ」
 浅ましい人の願いがこの無垢で聡い少女を巻き込んでしまったのだろう。京を救う龍神の神子として。
 代議名文は確かに尊い、何せ神に選ばれた子どもだ。だがそれが何だというのだ、体の良い人身御供ではないのか。少女を親しみ愛しんだ生まれ故郷から無理やり離して、この世界全ての住人の命を背負えと。それを潰れず受け止められたこと自体僥倖だというのに、それ以上彼女に何を望むというのだろう。それでも彼女は、必死に努力をしているのだ。ぎりぎりのふちに立って、努力することをやめないのだ。
 君に無体を強いたのはこの世界に住む人間どもだ。それを知っている人間が果たしてこの世界にどれほど居るのだろう。
 最初こそ不幸な少女だ、だが面倒に関わりたくないと高をくくっていたにもかかわらずいつの間にかこんなにもその強さを認めて、力になりたいと願う自分が居た。
 桜のような儚さを秘めながら強く、月を仰ぐ。その華奢な後姿を見つけたときから。
「じゃあ、友雅さんは違いますね」
 ふわりと風の軽さで少女の言葉が鈴の音を齎す。思わず瞳を瞬かせ、友雅は桜色の髪を梳く手のひらを止めた。
「なぜ?」
「友雅さんが京の平和を願うような人間じゃないからです」
 ぴたりと動きがとどまって、まじまじと無垢な瞳を見下ろした。聡い視線はいつも必ず友雅と恐れず視線を合わせる。それは少女の癖だった。
「酷いことを、言うね」
「友雅さんにとってはこれが酷いことなんですか?」
 そうは思えないと言外に断言した少女がぱちりと瞬きし、確信だけを瞳に宿らせてこちらを見上げてきた。
 ふと友雅の口元が笑みを刻み、瞳を細めてさやかな夜風に髪を撫でさせながら笑った。その笑みはいつものように、底の知れない笑みではなく、確かに久しぶりに本心から、笑ったものだった。それはこの少女が此処に着てからいつの間にか、時折浮かべるようになった笑みで。
「君は、本当に楽しい子だね」
 さらりと細い髪を揺らしながら、手触りの良い桜色の髪が友雅の指先を滑っていく。
「一般的には悪口だと思いますけど?」
「真実だと思ったから君は口にしたんだろう」
 口元に笑みを刻んだまま瞳がしごく楽しげに少女の瞳を覗き込むと、臆することなく彼女が肯く。
「はい、そうです」
 はっきりとした少女の物言いが子気味良い。
 彼女は人が傷つくと、解って物を言うことは少ない。そして心が傷つくと、解っていてその言葉を使うのはそうした意思をはっきりと持ったときのみだ。その殆ど全て、彼女の自戒に向けられるけれど。
「そうだね、確かに私は今日の瓦解が始まってこちら、一度も常盤の浄土を祈った事がことが無い。いや」
 翳る瞳が酷く深く瞬いて、星の灯りを弾いて見えた。
「人の本能は浅ましい。どこかで生き延びることを願っているのかもしれないね」
「それでも私がここにいることを変えるには友雅さんの力が必要です。私のせいで巻き込まれたことは事実で、それなのに力だけを求めている現実ははっきり言って嫌ですね」
 ふと口元に笑みを刻む。強く、それでも散る間際の花の如く、咲き初めのつぼみ混じりの柔らかな花弁のように、清らかな神子は微笑んだ。
「痛々しい美しさだね、せめて君を守らせてくれるかい?」
「守ってもらうだけは嫌です、ただ、私には力が無い。私のせいかも知れない可能性があるのに」
「可能性の問題でそれ程自分を追い込むのは愚かだよ」
「でも、大切な人たちが苦しむのは我侭な位に嫌ですね」
 さやかに光る星が闇の静けさを強調するようだ。星は清らかで、まるで何かの涙のように思えた。
 ふと顔を上げると友雅の指先から桜色の髪が零れ落ち、離れていった。そのまま少女は裸足で外に降り立って、苔生す深い緑の上へと降り立った。星の瞬きを受け止めるように手のひらを伸ばして、ただ空の月を仰ぐ。
「私には力が無い。悔しいほどに。おこがましいけれど他に方法が無いから、私に、龍神の神子に、力を、貸してくれませんか」
 庭に降り立つ音もなく。ただひたと見つめる視線は泣きたいほどに真摯だった。
「……おいで」
 履物を履き同じように庭に降り立つ。おいでといっておいて自分で傍まで歩くと、小さな体に腕を回してそっと抱き上げた。小さな爪先が地面からはなれて、軽々と友雅の右の片腕に乗り、左の腕で背中を支えられ一気に視界が高くなる。友雅の瞳を見下ろすくらいに。不安定な状態に肩に手をかけようかと躊躇したが、自分を抱き下駄その腕に微塵も弱さが感じられずに、ほっとすると同時に胸が痛くなる。
 見渡す視界が広くなると、今まで聞こえなかった木々のざわめきや草の音がふと聞こえるようになった木がした。回りを見渡す余裕が無かったなど、酷く久しぶりの気がして安堵と情けなさがない交ぜになった。
「重いでしょう?下ろしてくれませんか?」
「羽が乗るほどにも感じないね、下ろしたくはないよ勿論」
 実際本当に軽いのだ。京に来てからおそらく痩せたのだろう、それを苦々しく思った。
 にこりと笑みでかわされて、彼女がため息をつきそうになったとたん見下ろした端正な顔が酷く珍しいことに、痛いほどの真摯な思いを込めた気がして思わず言葉が消えていった。
「神子殿」
 この世界で一番尊い少女を。そして狭量な自分の世界の中で、おそらく失いたくないと始めて祈りにも似た願いを抱いた少女を。ただ深く、その存在を認める少女を。
「君を、護ろう。盾になり、剣になり、そして君の命となろう。世界の破滅を見ながら心中も悪くないが、君の命の糧となりえるならそちらの酔狂のほうが私好みだな」
 華やかな笑みが夜の静けさに咲く。真面目なのか不真面目なのかいまいち解らないいつもの彼の台詞なのに、なぜか涙がこぼれそうになって、初めて自分を支える肩に手を付いて、その衣を握った。涙を堪える為だと言い聞かせながら。
「じゃあ、その酔狂にもう少し手を貸して戴きます」
「もう何度も言っているだろう?まあ、君となら心中よりも共に未来を夢見たいものだがね」
「それはもっと口説き甲斐のある女の人に言って上げて下さいね」
「おや、つれない。本気なのにね」
 おどけたように肩をすくめる友雅の髪がさらりと少女の手の甲を流れていった。仰ぐ視線が酷く近い。
「君を、護るよ。誓約だ」
 ただその言葉が胸に深く沈む。言葉も無く、少女は笑って、そしてその表情を消して、己の無力さを嘆くようにただ今は、一回りも年の違う兄のような青年の肩に顔を埋めた。腕を首筋に回すと、やわらかく長い髪が波打って流れていく。
 嗚咽は聞こえなかった。涙もこぼれなかった。
 響く言の葉の音が、ただ静かに胸を打つから。
 少女を抱きとめて、抱き上げたまま、小さく華奢な体を包むように腕を回す。この体と魂全てに、どれほどの生命が、どれほどの営みが、背負わされているのか。
 仰ぐ星の輝きが何を言っても泣かない少女の涙のように、ただ静かに輝いていた。
 有明の月が沈む頃、彼女は桃源郷へと還るのだろうか。夜がただ静かに更けていく。
 空高く吹く風は静かに星の光を零して。

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ゆつき

Author:ゆつき
日々徒然。
何とか生き延びている。
うっかり突発小話ありけり。
何が出てくるか解らない。
おそらく切羽詰った精神状態で出てくる故注意が必要。


おねがいごと。
小話の続きは、コメントのほうに私が書き込んでいますので、小話への直接コメントはご遠慮くださいませ。

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