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サモンナイト1@トウヤ×カシス@フカザキトウヤに関する報告

サルベージ4
サモンナイト無印、トウヤ×カシス
『特記すべきは召喚術に関する優れた適応能力。先に記した報告に加え更にメイトルパの召喚獣との契約を可能とした。通常の召喚術士の潜在的契約範囲と許容量の広さは比較する迄もなく明らかである。また契約のレベルもランクが上位のものとの交渉を多数成功。フカザキトウヤは召喚当時から術が使用可能であった事も得意であるが中でも最も優れた柔軟性を見せる霊界の契約獣は既存の習得を上回る速さで会得。先日の戦闘の折り初めてAランクの術を行使。未だ目標が本部の推測と判断するは早計ではあるが魔力の高さ、霊界に突出した能力、呪文無しでの特異な召喚、召喚術を始めたばかりと思えぬ習熟等以上の点今一度考察されたし。ついては先の報告に加え新たに行使可能とした術の分析を』

ドアのノックの音。羊皮紙を机から奥の棚に移動させる。上からインク取りの紙を乗せて滲まないよう吸い取らせる一方、裏返しにできない生乾きの文字の踊る報告書をドア側から遠ざけた。ランプシェードで明かりを調節して万一にも目に触れないことを確認。彼は字が読めないけれど、彼以外に読まれても、困る。
「…起きてる?」
遠慮がちな声に無意識の笑みを浮かべたことをカシスは気が付かないままぱたぱたとスリッパを鳴らしてドアの向こうへと声をかけた。
「なあに?トウヤ」
開かれた扉の前に居た青年は穏やかに佇んでいた。
「リプレがね、呼んでいたよ。キッシュとプティングが出来たからお茶の時間だって、今大丈夫?」
いつのまにか慣れた首を傾げる仕草、視線の高さを合わせること。人の目を見て話すなんて、相手の心中を推し量る以外に無いと。きょうだいさえ殺して伸し上がってきた、常識が崩されもうどのくらいたつだろう。振り替える遠大な己の変化…ああ、まだ半年しか。
「今行く!」
目の色を変えたカシスはばたばたと書き物机を片付け始めた。余りの勢いにインク壺が転がりかけるのを慌ててキャッチし積み上げてある召喚術関連の学術書もそのままだ。
口元に手を置いて笑みを隠しながらトウヤは更に追い打ちをかける。
「早くしないとちびたちやら護衛兼はぐれ召喚獣やら忍び見習いやらリプレのパイが一番好きな素直じゃない奴の腹に収まるよ、全部」
「そんなことになったらゲルニカで報復!」
地上を煉獄と化す巨大な龍はカシスが先日契約に成功した一等お気に入りの召喚獣だ、ゲルニカもよく彼女に懐いて、初めて対面したときは両手を広げたカシスに嬉しげに頬を寄せた程だ。カシス曰く、謙虚で恥ずかしがり屋なゲルニカだがカシスにとても従順で、カシスに指示されればきちんと任務を遂行する。この物騒な宣言はカシスがやるといったら止める者は居ない。
「…庭の花壇を壊さないようにね」
にこりと笑って付け足すに止める、大切に育てている花が龍に踏み潰されたら幼気な子供たちが泣く。他は擁護範囲外なので自分の身は自分で守ってもらうことにした。
「…と、終わり、あークロテッドクリーム残ってるかなあ」
プレーンのスコーンにたっぷり付けて紅茶と頂くのがカシスのお気に入り。椅子の背にかけた上着を羽織ながら忙しない足音をぱたぱたさせながらトウヤが寄り掛かり待っている部屋の入り口に突進してくる。
「行こうトウヤ?」
「…先に行っていて、シオンさん達が中庭居るはずだからそっち寄ってから僕は行くよ」
ぽんとあやすように紅茶色の髪を撫でれば気遣うような目線が伺いを立てる。気にしないでという意志をこめて二回頭を撫でると、眉根を寄せた可愛らしい顔が首を傾げた。これは言いたい事があるのに言えないでいるカシスの仕草だった。瞬順するまたたきに、トウヤの袖口を握り締め、はやくね、といって、トウヤが頷くと小さな背中が翻って居間に向かって駈けていった。
小さな背中が完全に視界から姿を消したあと、急にひっそりとした室内を一瞥したトウヤはめらいもなく足を進めた。主人の居ない室内にランプの明かりだけが満ちて。
「ポワゾ」
呪文もなく真名を呼ぶだけで召喚されたふわふわと浮く不思議な生きものがトウヤに親しみの籠もった視線を向けた。
「誰か来たら教えてくれるかな、静かにね」
愛敬のある目元に笑い掛けると、体一杯で頷いてトウヤがぱたんと閉めたドアの内側にふわふわと寄り添う。自分も気配を確かめると改めて部屋を見渡した。
夕食の時ひどく沈んだカシスの様子に心当たりがあったから。リプレに頼んでカシスの好きなものを含む夜食をリクエストした。彼女もカシスを気に掛けていたのだろうパイ生地を用意しながらスコーンも焼かなきゃね、と明るく請け負った。時間はずれのお茶の時間は予想外に豪華になりそうだが最近人工密度が増えたここでは特に珍しくもない。酒が飲めるものは子供たちが寝静まったのを起こさないよう穏やかな沈黙に杯を重ねる。今日は、少し賑やかなだけ。
中庭で明日の探索に必要な薬草を採っているシオンは暫くしたら行くと言っていた、トウヤも自室に本を取りに行くついでだといったので入れ違いになっても彼に不審を与えるだけでおわる。そして、シオンならこのことを黙っていてくれるだろう。
付けっ放しのランプ、散らかった机の上にはインクの乾いていない羽ペンが転がっていた。それなのに書いていたものが不自然なまでに消え去っている。ちらと机から明かりの届かぬ闇にひっそりとおかれた羊皮紙に視線が向けられた。
トウヤはこの国の文字が読めない。言葉は通じるから、自分の中に入ってくる音が勝手に翻訳されているのだろう。だが、この国の文字の携帯は学校で数年学んだそれに酷似していることは誰に伝えることもない、些末事であった。
インク取りの薄紙の下にうっすらと浮く見慣れた―そう、見慣れたカシスの筆跡。毎回一行目に同じ文字と日付。ざっと目を通す。
「随分誉められたものだ…」
似通ったスペルは優秀、特出、有能、早期、何れも何らかを誉めるような形容詞を示すと思われた。あと、いつも使われる、『本部の推察』。コレが鍵。そっと書類を戻して最後に確かめる。カシスが必ずこの形式で記す羊皮紙の一行目にかかれる文字は、この世界で、彼にこれでトウヤとよむんだと教えてくれた彼女自身の筆跡が存在している。最初から、ずっと。トウヤと。





冬が、雪が近い、はずだった。
ここに呼ばれてからトウヤにとっては初めての冬。カシスにとっては、誰かと過ごす初めての冬。
リプレは冬支度に向けて忙しい。年を越すための、また新しい年を寿ための遣り繰りに忙しない。例年にない大所帯、賑やかになるぶんの支出をどこから購うか、と頭を悩ませていれば力仕事は元気いっぱいの猛者どもが上手にトウヤに転がされあちこちに出掛けては山賊やら何やらを倒しては賞金を奪いめずらしい薬草を採ってきては売り払う。資金繰りにはことかかないからリプレママははりきった。何の心配もなく大勢と賑やかな新年を迎えることが出来るのはとても嬉しい。何より、身を寄せ合って生きてきた自分より小さな子供たちにたくさんの交流が生まれて一日笑い声が絶えないのが嬉しい。ぐっすりと眠り込んだこどもたちの頬にキスして、風邪を引かないようにそっと毛布でくるみなおす。ショールを掻き合わせ静かにこども部屋を出ると、窓から月の光が夜の廊下を四角く照らしていた。
今日は満月なのね。
一層明るく白い光が足元を照らす、住み慣れた家だからランプなどいらない、月明かりがあるなら十二分。ちらと廊下の奥で灯りが揺らめいた。暗い中ランプを使うのはここにきて間もないものだ。紅茶色の髪がゆれてる。細い人影は女の子特有のものだ。
「カシス?ミルクが欲しいの?」
ふわりとローブをなびかせて振り替える人影の、わずかにゆれた瞳。ランプシェードの揺らめきのせいだと思うことにした。
「ココアもあるよ?ミルク泡立てて、マシュマロ浮かべようか?」
ほんわりとリプレが笑と、カシスが嬉しそうに頷く。
「二つね?」
「うん」
「風邪引いちゃ駄目よ?」
「うん」
冷えきった指先をあたためるようにカシスの手を取るとキッチンへと歩きだす。
気付いても踏み込めないなら、自分が出来る精一杯をする。それが無駄なんかじゃないことは凄くよく知っている。だって初めてカシスが、リプレの手料理においしいと笑った笑顔にはしあわせが彩られていて、リプレは胸が暖かくて満たされて嬉しかった。
活発ではじけるように笑うカシスの光の影に歩み寄れるのはきっと自分の役目ではない。
「あのね」
なあに?と視線で問えばカシスが月明かりが差し込む廊下でこぼれるように笑った。
「お夜食おいしかった」
「クリーム重かったり甘すぎたりしなかった?」
「あれをたっぷりつけて食べるのが幸せなの」
カシスが笑うならそれでいい。




湯気を乗せるマグカップにたっぷりのミルクとココア。砂糖とマシュマロがふかふかに泡立てられたミルクの雲に泳いでいる。リプレがカシスにいれてくれる飲み物はいつだってカシスのことをよく考えて出されたものだ。食事もお菓子も同じ。リプレママには顔があがらない。体にも心にもこんな優しい飲み物をカシスのことをだけ考えて作られたものを手にしたのは初めてだ、このフラットで。暖かくて安らかでびっくりした。セルボルトの後継に出される希少な本も秘術も栄養価の高い食事よりも何よりも優しくて呆然とした。
この手は血塗られている。
おのがきょうだいの血に濡れている。
台頭したのは四人、カシスを含めどの子も同じような魔力を継いでいるのに属性が違うのはそういう母親があてがわれたからであろう。栗色の髪の男の子がにらんでカシスと同じ色の髪と目が彼の世界にあるという緋色の実の色に
カシスの姉妹が片足をもぎ取られ
黒髪の少年の暗黒に塗り潰されながら広がった瞳孔の
淀みなく流れていく召喚の呪、きらめくサモナイト石を次々に使い、しゃらしゃらと音がする、宝石のぶつかり合う音、構えた杖、かつんと足を馴らし、しゃんと立っていた。真っすぐ視線を上げれば見えた
父の顔が心なし満足気で、カシスは杖を捧げかしずいた。そして次に立ち上がるとき、疎の瞳は真っすぐと美しくひるまず、堂々たる足取りて前に進む。長い杖を石畳に鳴らしすらと立つ少女の姿。
その尊厳に満ちた魔王の贄の姿。
セルボルトの儀式のそれが全てだ。
世界の全てがカシスにとってはそれだけだった、でも今は違う。知ってしまった、教えてもらった、肉親殺しも魔王の贄になることも死ぬことも当たり前じゃないなんて知らなかった。誰も言わなかった。世界はこれでただしいのよと。
ねえ、こんなあたたかなものに触れない。汚れてしまう。
いつまでも赤い気がするこの手がどうして優しくて厳しくて暖かいあかぎれだらけのリプレの手に触れるだろうか。
甘いミルクとショコラとマシュマロの匂い。優しくて嬉しい、だから離れたくなる。これは不可侵のものだ、このフラットの穏やかさと優しさは決しておかされてはならない。
そのためなら私がまた手を染める。トウヤを偽って塗り固めた偽善で、でもこれだけは。
「月見するときは誘うって約束したろう?」
突然の柔らかな声が頭のうえに降ってくる。陰ったはかない月の光、冷えたカシスの頬を暖めるようにきょうだいと同じ黒髪の少年が笑っていた。屋根のうえのお月見はいつの頃からか暗黙の了解を伴ってお互いを誘うことになっていた。今日はなのにカシスが一人。
ばさりと毛布を広げて自分ごとカシスの小さな体をくるみこむトウヤの暖かな体に強ばった体はいつもなら自然にほどけていくのに、カシスは大きな瞳を見開いてくびをひねるように後ろのトウヤを凝視した。
あの黒髪を黒い瞳を絶望の、闇を。全て血と死に染め上げたことを克明に、思い、出した。
「トウヤ」
「なに?」
「あたし」
「うん」
人を殺したことがあるの、肉親は三人。他にもっともっと。
罪を告白した処で告解司は許さぬであろう。でも離れてくれたらそれだけでいい。暴いて罵られればいい。いけない、知られる、組織は秘さねばならない聡すぎる彼に疑念を抱かれるような好意は謹むべきだまだ利用価値すら計り知れていない報告すべき特異さは山のようにとうさまとうさまとうさま

忠誠を

でも、私を殺してくれたら嬉しい。君になら殺されてもいい。組織のため散々巻き込んだ、自分の迷いが無関係の彼を死地に追いやった、ごめんなさい、なんて死んでも言えない。死んで許しを請うなら一つだけ、貴方に会えたこと嬉しくて、ごめんなさい。
幼子が途方に暮れた顔で紅茶色の髪がまろやかな頬の線で柔らかに揺れる。無表情なのに言葉に出来ない切実な思いが色彩に欠けた瞳に写った。
幾度も見てきたカシスの表情の意味。人と居るときはいつも天真爛漫で快活に明るく笑っているのに、心の中に常に張られた糸がある。いつもぎりぎりまで張り詰めていて、切ることは決してない。出来ないのだ。無意識のうちだから尚質が悪い。無意識だから、トウヤには何も出来ない。傍にいて、離れないことしか、出来ない。カシスの心の琴線が切れてしまったときカシスがどうなるか、トウヤには解らない。
毛布で包んだ細い肩にどれほどの重みを背負っているかなんて解らなかった。
「ねえ、カシスって」
「ん?」
「きみの世界にあるんだよね」
「あるよ」
僕の分は?ときくまでもなく、トウヤ専用のマグをカシスの手から取り上げる。ショコラの苦み、砂糖は抜き。ふわふわに泡立てたミルク。マシュマロは無し。所在無げに小さな両手に納まっていた暖かな柔らかさは本来の場所に落ち着いた。膝を立てて足の間に小さなからだ、二人して座り込んで毛布にくるまって、白い月の光に濡れた。
一口飲むとほろ苦い。リプレの暖かな味。
「カシスっていうのはね、果物なのかな?よく知らないけれど果実酒とかお菓子とかに使われてるかな?とても綺麗な色をしてる」
「色?」
「赤、かな。凄く綺麗な」
小さな肩がぴくりと揺れた。
「…相応しいね」
小さな声、小さすぎて聞こえない声。
赤く濡れた手になんと相応しくある名か。
「そうだね」
ぽんぽんと強ばった肩を撫でられて、紅茶色の髪にトウヤは額を寄せた。
「とても美しい赤だ。透き通っていて、召喚石を溶かしたみたいな。ワインより薄い、光を弾く。鮮烈で、鮮やか」
ことりとマグをおいて。カシスの小さな両手が持つマグごと自分の手で包み込んだ。
手に触れられることをカシスが嫌がることを知っていながら。
「ああ、カシスが術を使う鮮やかさに、少し似ている」
優しい手の温度にこの人を騙している切なさにどうしようもなくなって。こうやって包まれながら彼の胸でだけは泣く権利などないと。解っていながらカップを握り締め、唇を噛み締め、顔を伏せた。さらさらと紅茶色の髪が顔を覆っていく。
赤い手はトウヤの大きい手のひらに包まれても赤いまま、罪は罪のまま。
罰はいつ下るのか。
かみさまおねがいかなわないねがいをうまないで。傍に居たいよなんて決していえない。
決して言えない。
「…トウヤの分を用意していたのにトウヤ呼ぶの忘れちゃった 」
俯いたまま紅茶色の髪が揺れた。わざと冗談めかした言葉に気付かないでと願ったけれどトウヤの前では無駄な努力だ。案の定情けなくも泣きだしそうな響きに柔らかに包まれた手に力が籠もった。暖かな腕のなかにカシスの居場所なんて、最初から無いのだからトウヤを呼ぶことなんて出来なかった。
「僕が居ること忘れなかっただけで許してあげる」
屋根に置いたマグは二つ、トウヤ専用のカップ。
「許さないで」
きっぱりとした口調で糸をぴんと張るカシスの声。
「許さないで、罪は罪のまま」
君にすがる資格もなく己の厚顔無恥にはほとほと呆れた。
トウヤに声を継がせないりんとしたカシスの断言。トウヤはこの声が嫌いですきで嫌いだ。美しくトウヤを拒絶するカシスの声だ。
「何が罪?何を許されたくない?」
だから容赦無く切り込んでいく。カシスが言えないことを承知で。
「カシス。一つだけ知っていて。罪も罰も関係なく僕がカシスの隣に居たいことを忘れないで」
そんなこと真実を知ったら瓦解する事実に決まっているじゃないか!
叫ぶのを堪えて月と星のした暖かな互いの体温にカシスは泣きたかった。包んでくれる毛布の端を力一杯握り締めて、俯いたまま。こんなに泣きたいのに吐息すら漏れない。これほどの罪と幸福はない。
ありがとう。
うれしい。
だいすきだよ。
あたしも、君の隣に居たくて。
絶対に言えない言葉ばかり積み上げて重なっていくから泣きたくてしょうがなかった。もう幾つ飲み込んだ言葉があっただろう。悲しいなんて、言えない。嘘と裏切りで塗り固めた己のなかのちっぽけな言葉を、嘘と偽りで塗り固めたまま口に出せるはずがない。
それでも、泣きたいほどにうれしいだなんてもっと、言えないのだ。



2005/11/18 初出

サモンナイト無印、トウヤ×カシス@カルマ

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プロフィール

ゆつき

Author:ゆつき
日々徒然。
何とか生き延びている。
うっかり突発小話ありけり。
何が出てくるか解らない。
おそらく切羽詰った精神状態で出てくる故注意が必要。


おねがいごと。
小話の続きは、コメントのほうに私が書き込んでいますので、小話への直接コメントはご遠慮くださいませ。

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